GoogleやIntel実践する社内の目標管理方法「OKR」とは?

MBOとは違った手法で社内の目標管理を最適化する

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OKR(Objective and Key Results:オブジェクティブ・アンド・キーリザルト)の略で、目標と主な結果のことを指します。OKRとはIntelに務めていたジョンドーアというベンチャー投資家が提唱している、上手に実行するために方法です。Google、Intelなど世界的企業がこぞって導入を進めるのには理由があります。

ジョン・ドーア本人によるTEDのプレゼンはこちらから

OKRはなるべきシンプルに、そして素早く何を目指し、どう行動すべきかを1社員からマネジメント層、経営者層まで幅広く意思決定プロセスを短縮します。全てが定量的なデータのため、曖昧な答えはなくYes or No、達成 or 未達成 などと曖昧さを排除した考えでもあります。その背景にはOKRを提唱したIntelの元CEOアンディグローブの技術者的指向が影響されているのかもしれません。

あらためて、MBOとは?

目標管理の手法として、MBO(Management By Objectives:マネジメント・バイ・オブジェクティブ)をきいたことのある方は多いと思います。

MBOとは経営学の紙と称される有名な経営学者ピーター・ドラッカーにより1950年代に日本に来たきたもので、現在では「目標管理制度」などと言われることが多いです。目標管理制度とはただタスクを与えてそれをこなすというだけではなく、目標をたてて、それを達成するためにタスクを割り当てるまたはこなしていく管理制度。

つまりやみくもに商談をするのではなく、「1日20社と商談する」などと通過点となる目標を設定して業務に当たることを指します。基本的に、目標管理制度とは設定した目標を達成し続けるまたは目標達成に向けて仕事をしていく為にPDCAサイクルをまわすということがセットとして考えられています。

PDCAサイクルやOODAループについてはこちらから

MBOを利用することで、日々の業務がただの業務にならず目標に向けたものになるのでやる気もそがれることなく、仕事が出来ます。さらに、目標が明確になることで上司はより具体的な業務指示やアドバイスを行う事が出来るので、関係性の改善にも繋がります。

このようにMBOは優秀な制度・手法と言えるでしょう。

MBOとOKRの大きな違いは?

MBO_and_OKR_comparison_chart

MBOとOKRは共に優秀な目標設定手法ですが、実はやり方に大きな差があります。
このようにチャートにしてみると違いが分かりやすいですね。

OKRとは?

OKR_explanation

改めて、OKRとはObjective and Key Results(目標と主な結果)のことであり、目標を設定する上で大きな力を発揮します。しかし、ただOKRを導入すれば良いというわけではなく、環境や理解度など様々な要素が影響します。さらに、OKRを成功させる要因となる「目的意識」というものがあればOKRをよりよいものにし、会社にあったOKR運用が可能になるのです。

会社・チーム・個人の目標の融合

まず、OKRの大前提として個人の目標達成がチームの目標達成につながり、チームの目標達成が会社の目標達成に繋がっている必要性があります。

例えば、会社として1億円稼ぐという目標あったとして、「よし!みんなで1億円稼ぐぞ~!おー!」では全く具体的に何をすれば良いのかがわかりませんよね?こんな時にOKRが利用できます。

営業部、マーケティング部、人事部、経営企画部など部署毎に会社の目標に直結するチームの目標を設定します。さらに、チーム内でも業務単位まで落とし込み、個人の目標をたてて、それらが全て達成されるとチームのゴールが達成されるように設計します。

このように繋がった目標設定を行う必要があるのです。

適正な目標設定の方法

まずOKRの目標を設定する際に最も重要視されている軸にSCAIというものがあります。

SCAIとは、

  • Significant(重要)
  • Concrete(具体的)
  • Action Oriented(行動指向)
  • Inspirational(鼓舞)

つまり、会社やチームにとって重要で、具体的で、行動を促すもので、チームや個人の仕事を後押しする志や共感性の高いものでなくてはならないという考えです。

SMARTで適正な目標設定を

他にも、目標設定をする際に必要な考え方でSMARTというものがあります。

SMARTとは、

  • Specific(具体的)
  • Measurable(計測可能、定量的)
  • Achievable(達成可能)
  • Relevant(関連性の高い)
  • Time-bound(明確な期限)

つまり、具体的で、数字などの定量的なデータを用いて、達成できる可能性のあり、事業に関連性が高く、明確な期限が決まった目標を設定することは必須です。

1on1ミーティングを用いて目標の共有を

大企業になればなるほど、経営陣との距離があると感じるようになります。自身の仕事がなんのためにあって、どういう影響を及ぼしているのかそういったことがわからなければやる気を失ってしまうこともあるでしょう。1on1ミーティング(マネジメントスと経営陣の場合は1on1でない場合も大いにある)を用いて、経営陣から得た目標を共有した上で一緒に目標を設定していくのです。このときに大切なのが、「チームの目標・会社の目標と繋がった目標設定になっているか」、そして「適正な難易度の目標設定(現実的に考えたときに60~70%の達成率になるであろう目標)」になっているかどうか。それらを考慮し、話し合いを重ねながら目標を決定します。

OKRを上手く運用するための7つのコツ

絞る

Key Result(主な結果)は1サイクルあたり、3つ~5つに厳選するべきです。理由としては、Key Resultがあまりに多いと何にYesといって、何にNoといえば良いのかという基準が曖昧になりがちだから。個人のObjective(目標)と関連付けたKey Resultは合計5つ以下にするのが好ましい。

ボトムアップ方式で目標設定を行う

トップダウンで目標やKey Resultを設定してしまうと、従業員のやる気をそいでしまう可能性が。自主的に上司と相談しながら、最低でも半分以上は自信に決めさせることで、責任感も生まれ、考えるきっかけをうむ効果も期待できます。

押しつけない

OKRは優先事項を決定し、それをどのように遂行し、どのように達成するのかという自らのToDoリスト従業員1人1人に持たせている状況に近い。会社としての目標が定まっても、個人の目標や具体的な業務の内容またはやり方については常に改善や改善余地があると言うことを頭の片隅に置いておくことも重要です。

柔軟性を持つ

職場環境や社会情勢など様々な状況が変わり、目標の達成が現実的ではないまたは不可能になる場合があります。そういった場合には柔軟に目標設定の変更(調整)または目標自体を躊躇無く捨ててしまうのも選択肢の一つです。

失敗を恐れない

野心的な目標を設定することで、従業員個人は達成する方法を模索し、結果的に大きく成長するきっかけをつかむ可能性もあります。会社やマネジメント層はケアを行いながら、従業員自身を鼓舞し、成長を促すべきです。このようなチャレンジな環境に身を置くことで組織としても、個人としても成長し、新たなステージへ引き上げてくれる可能性があります。

人事評価とは紐付けない

OKRとはあくまで自分自身に明確な課題を与え、その課題を解決するために行動を明確化するためのツールです。どれが出来ているからお給料がアップだとか、ボーナスが支給されるだとかの評価に関連付けてはいけません。OKRは従業員が自分自身のために課すものであるからです。

辛抱強く

OKRを導入してからしばらくは上手くいかないこともあるでしょう。目的が分からずに導入すると何度もつまずくことになります。それでも時間をかけてゆっくりと浸透させていきましょう。1年以上かかることもありますが、組織としての成長プロセスに必要は時間です。

GoogleとIntelでのOKR利用事例

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OKR at Intel

Intelの創業当初、圧倒的な高品質のプロセッサも開発により市場を席巻していました。プロセッサIntelとなるほど、圧倒的な支持を得ていました。しかし、そんな中で大きなライバルが現れます。Intelよりも高性能なプロセッサを生み出したモトローラ社とザイログ社です。この2社の脅威がある中、安価なコンピュータメモリであるDRAM(dynamic random access memory)はベンチャー起業にシェアを奪われたばかりで、プロセッサのマーケットリーダーであるIntelは周りを様々な野心的な起業に侵食され、倒産の危機を迎えていました。

そんな中でインテルが行ったのは「クラッシュ作戦」。
この作戦はインテル滅亡危機という現状の打破をし、マーケットで再び存在感を示し価値を提供することを目的としていました。実際に製品に改革を行ったわけではなく、顧客との関わり方や営業手法、顧客への教育により市場の流れを流れを変えることに成功したのです。そしてもちろんこの成功の要因となっていたのがIntel流のOKR。

Intel流OKRは以下の内容です。

IntelのOKR

Objective:Intelの全社目標

  • 8086(Intelのプロセッサ)を業界最高水準である16ビットマイクロプロセッサ・ファミリーにする。以下をその尺度とする。

Key Results:主要な結果

  • 8086ファミリーの市場での優位性を示すベンチマークを5つ開発し、公表
  • 8086ファミリー全ての製品をリリースし直す
  • 8MHz版の製造を開始する
  • 数値演算コプロセッサのサンプルを遅くとも6月15日までに制作

このように現状をマーケティング目線で精査した上で具体的に何をするのか、どの方向性を目指すのが、またその選択をした理由や根拠は何かを議論の場で話し合い、OKRを決定しました。それにあわせて、技術部門の部署のOKRも作成されます。

Intelの技術部門のOKR

Objective:技術部門の目標

  • 5月30日までに8MHz版500個をCGWへ届ける

Key Results:主要な結果

  • 4月5日までの最終図版をフォトプロットにする
  • 4月9日までにRev2.3マスクを向上に届ける
  • 5月15日までにテストテープを完了させる
  • 遅くとも5月1日までに工場のレッドタグを開始する

このように野心的で意欲的なチームで創り上げたOKRは会社全体を盛り上げ、目標に向けて最短距離で同じ志をもって進むことが出来ます。結果としてこのOKRを実行したIntelの市場での優位性は今なお引き継がれています。

OKR at Google

スタンフォード大学在学中の学生であったセルゲイ・ブリンとラリーペイジ(現在は2人ともGoogleと親会社のAlphabetのCEO、社長を退任)により1998年に創業したGoogleは現在でも世界最大の検索エンジンです。当時の検索エンジンはPCで検索機能無しでファイルを探すようなずさんな設計であり、虚偽の情報も含めて様々な情報が世の中にあふれていました。2人は「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」という考えを主軸に、様々な改革を行ってきました。

今で多くの人が使っているGoogle Maps、YouTube、Androidやビジネスではインフラとさえも言えるG SuiteやGoogle Driveは世界中の人々を何度も驚かせ、世界をよりよい場所にするための大きな助けとなりました。

そんなGoogleに2015年に3代目のCEOとして就任したサンダー・ピチャイ。彼は実は前職で何度もIntelを訪れ、OKRの文化に触れていました。そんな彼がGoogleに入社したのは2004年、まだGoogleの主たるビジネスが「検索」である頃。その頃、Googleではブラウザの改良に野心も燃やす人がたくさんいました。そんな中でサンダーピチャイは究極のブラウザを作るべく、Google Chromeの開発に乗り出しました。

サンダー・ピチャイが設定したOKRの最優先事項

Objective:目標

  • Webアプリケーションのための次世代プラットフォームを開発

Key Result:主要な結果

  • 一週間のアクティブユーザー数を2000万人にする

このOKRに対して、実行を行いましたが、すぐに成功は訪れませんでした。最初の「2000万人」という目標は見事に失敗し、次に設定した目標の「5000万人」も未達に終わりました。当時CEOのラリー・ペイジとの話し合いの末、「1億1100万人」という目標を設定しました。これは当時のインターネットユーザーの10%以上のシェアをとるというかなり挑戦的な目標でした。

この目標を達成するにはこれまでのやり方では到底間に合わない、そう思ったサンダーピチャイはプリインストール契約の拡大、Mac版とLinux版のリリース、そして新たなマーケティングキャンペーンを開始しました。ストレッチ目標(挑戦的な目標)を設定して、不可能を可能にするそんな活力を与えてくれるのがOKR。今日のGoogleがあるのはOKRのおkげといっても過言ではありません。

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Google流のOKR

GoogleはOKRにおいて世界で最も進んでいる企業といっても過言ではありません。Googleは常に時代や状況に合わせて柔軟にOKRを使って成長を加速させてきました。

OKRとは自らの時間や能力などをどのように配分し、不可能と思う状況を打破するための力の源になります。OKRを使えば最低限のリソースで産業を根本から変えることが可能で、実際Googleは何度もそれを実現させています。そのGoogleの成長や躍進を後押ししたOKRのやり方をご説明致します。(こちらはGoogle流のやり方であり、正解というわけではありません)

色でわかりやすく達成率を伝える

  1. 達成率0~39%:赤色
  2. 達成率40~69%:黄色
  3. 達成率70~100%:青

目標とは「What」を意味する

  • ゴールとその意図を表す
  • 野心的でありながら、現実的
  • 具体的、客観的で、曖昧さがない。つまり第三者から見て目標が達成されたかどうかが明白でなければいけない
  • 目標達成によりGoogleに明確な価値がもたらされる

主要な結果とはHowを意味する

  • 測定可能なマイルストーンがあり、それの達成が目標の達成に直結する
  • 活動ではなく、成果を書く。成果がないのならエンドユーザーにもたらす影響を書く
  • 完了の根拠となるエビデンスを書く

チーム横断型OKR

Googleのような大企業だと1つの部署ではなく、複数のチームや部署を横断してプロジェクトを遂行することがほとんどです。そういった場合はそれぞれの部署または部署の特定のメンバーなど適正な人材・範囲に対して異なったOKRを設定することは必要です。

「コミットするOKR」と「野心的なOKR」

コミットするOKR

100%の達成率を基本とし、達成率が100%にならなかった場合はその原因を究明すべきです。

野心的なOKR

実現したい世界を表現するのが野心的なOKRです。それに必要なリソースも、時間や計画も全く分からなくても良いのです。野心的なOKRにおいて理想的な目標達成率は70%ですが、目標によって変動します。

OKRを作成する際の落とし穴

1,「コミットするOKR」と「野心的なOKR」

この二つを区別できていなければこれは問題です。

コミットするOKRとして設定したものが野心的なOKRの場合、未達の可能性が高まります。難易度が高すぎて、他を調整して成功いつを高めようとしなくなります。

野心的なOKRとして設定したものがコミットするOKRの場合、チームが守りに入ってしまい、優先順位の逆転を招く可能性があります。

2,通常業務をOKRにする

チームが会社または顧客にとって必要で大切なことをObjectiveに設定せず、通常業務をOKRとして設定してしまうと、簡単すぎる目標となってしまう可能性が高い。

3,野心的ではない野心的なOKR

多くの場合、OKRを設定するときに現状のリソースや途中地点の自社にとって可能な目標に設定してしまう。今従業員が何人で、現実的に考えてこうなるだろうから…と計算するのではなく、制約がない前提で自分たちが数年どうありたいかもしくはお客様が何を求めているかを考え、そこへ向けたOKRを設定するべきなのです。

4,力の出し惜しみ

チームでコミットするOKRは現状あるリソースをベースに考える必要は無いということです。野心的なOKRとコミットするOKRを組み合わせれば本来は現在のリソースで出来る仕事の少し上の仕事量になるはずなのです。そうならないということは目標設定が間違っているということ。

5,価値の低いOKR

OKRとはそれにより得られる価値が会社への価値になる必要があるのです。価値の低いOKRとか目標を達成したところで会社の価値には一切繋がらないまたはほとんど影響しないOKRを指します。

6,目標に対してKey Resultが不十分

目標をより明確なものとするなら、その目標が達成されたとする主な結果(指標)も明確である必要があります。

結局OKRとGoogleどちらがより優秀なの?

結論、MBOとOKRどちらがより優秀ということはありません。

むしろ使い分け、併用することでお互いの強みを活かしながら弱さをカバーできるものです。MBOが確実で丁寧な目標管理制度であるが故に、変化に弱くスピード感に少し欠けるところをOKRのスピード感と柔軟性でカバーすることが出来ます。さらに、OKRのように会社の上流の考えをボトムアップと上手く融合して社員のやる気を継続させ、会社としても企業としても成長するチャンスを与える一方で、具体的な報酬の決定(評価)はMBOに頼った方が良いといった具合に使い分けることでより強みとなるのです。

企業ごとにあったOKRのやり方というものがあり、正解はありません。是非あなたの会社の文化と上手く融合したOKRを運用してみてはいかがでしょうか?

最近では社内コミュニケーション活性化、つまり純粋なコミュニケーションを増やしたり、従業員との関係性構築はもちろんですが、目標の共有であったり、業務の進捗のの共有など直接コミュニケーションをとりづらいけど合った方が良い情報をデジタルサイネージコンテンツとして配信することで業務を加速させている企業が増えています。是非一度お試しください。

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